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放送大学で頑張って勉強する日記です。

【読書感想】 権威と権力―いうことをきかせる原理・きく原理 なだいなだ著

以前よりかなりの名著と絶賛されていたので、

一度読もうと思っていた本で、今回図書館で借りてきた。

 

結論をいうと、まさに名著である。

この本は、精神科医のなだいなだ氏が、権威と権力について、

高校生と対話するという形式で書かれている。

したがって、文章は非常に平易で、

高校生でも十分読める内容となっている。

 

この話はまず、高校生が作者に、

クラスにまとまりがないということを嘆きつつ相談し、

どうすればクラスにまとまりが生まれるのか?という話から始まる。

 

それを聞いた精神科医も、たしかに最近、政治でも企業でも、

どこもまとまりがなく、みんな好き勝手にバラバラになっており、

昔はもっとまとまっていたはずなのにと、この高校生と同様に、

嘆く意見をよく聞くと思い、これは十分検討に値する

内容だとおもって、二人で対話が始まる。

 

二人は、なぜ最近の人はまとまりがなくバラバラなのかという対話の中で、

昔は、父親、先生、医者、政治家などは権威があったのに、

最近ではすっかり権威がなくなってしまったので、

それが原因ではないのかという話になる。

 

そして、権威と権力とは何が違うのかという話になる。

 

そして、権威というものは何なのか、

ひとはなぜ権威というものをありがたがるのか?

権威があるということはよいことなのか?

 

などなどどんどんテーマを掘り下げていく形式となっている。

 

この本の初版発行は1974年となっており、もう今から40年以上前だ。

そのため一部記述が古いなと感じるところなどあるのだが、

全体的には、この権威や権力についての考察は、

今でも古く感じない点は、つまり、40年間日本の社会は、

それほど進歩してないということなのかもしれない。

 

この著者は、アル中専門の精神科医なのだが、

対話の途中に、医者という権威にすがって、夫のアルコール中毒を、

何とかしてほしいという患者の家族がやってくるエピソードがある。

 

この話などは、おそらく当時、著者が普段から、

診察室でよくやり取りされていた光景なのだろう。

 

この著者は、医者が権威を持って、その権威の力で、

患者をコントロールすることを否定している。

権威で患者にいうことを聞かせるのが医者なら、

医者は医学の勉強など必要ではないではないか?

医者は、事実をきちんと患者に伝えれば、

患者自ら自分の得になる行動をするのだということを言っている。

 

いまでは当たり前のインフォームドコンセントだが、

この時代はまだまだ一般的ではなく、

人々は、医者の権威にすがって、治療してもらうという、

意識が高かったのだろう。

 

2016年現在でも、共同体のまとまりのなさを嘆き、

権威の存在を待望する意見は非常に多いとおもうが、

そのようなご意見の方、一度この本を読んでみられると、

頭の中が整理されるのではないかとおもう。

 

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)