【読書感想】 依存症 信田さよ子著
依存症というタイトルだが、ほぼアルコール依存症について書いてある本。
アルコール依存という問題の複雑さについて、
書いてあるのだが、個人的にはもう少しすっきりまとめてほしかった感がある。
おそらくこの本で最も重要な部分は、
長年の試行錯誤から、アルコール依存症というのは、
本人がアルコールを飲まなくなったら、解決するというような
単純な話ではないということだ。
アルコール依存症というのは家族の問題であり、
関係性の問題であるということ。
イネイブラー(アルコール依存症患者に文句を言いながら、
実際には依存症の症状を強化させてしまう人)や
アダルトチルドレン(アルコール依存症の親を持つ環境に育った子)の
説明などは非常に良いと思う。
そして、巻末ではアルコール依存というのは、
セルフコントロールをしようとした人こそがかかる病気などだということが
書いてある。これは非常に重要なポイントだと思う。
これは非常に逆説的な話なのだが、
多くの人は、アルコール依存症患者というのは、セルフコントロールの利かない、
だらしない人たちなのだと思っているかもしれないが、
実際は逆であり、セルフコントロールができるはずがないことを、
無理にコントロールを試みた結果、お酒に手を出すしかなかった人々なのだ。
依存症の人たちは何よりも時代の、資本主義の要請に忠実だった人である。セルフコントロールへの脅迫的な忠実さ、頑張り、向上心、絶え間ない前進……昨日より今日が、今日より明日という生き方、これは現実の自分を絶えず否定していくことによって初めて可能な生き方である。このような実に不健康な生き方を続けていくためには、セルフコントロールを時間限定つきで解放することが必要になる。
そして、このような依存症から解放される方法については以下のように書いてある。
自分で自分を思いどおりにして日々より良い自分を形成していくという命題の忠実な実行者が依存症の人たちだったとすれば、その逆をやればいいのではないだろうか。つまり、がんばらずに、争わずに、昨日と同じ今日を、今日と同じ明日を生きること……。
「女は表向きは男に支配されているようにふるまいながら、
本当は上手にコントロールして、男をしっかり働かせるぐらい
したたかじゃないとね。」
と思っている女性のみなさん。
その考え方は非常に危険ですよ。この本を読めばわかります。