【読書感想】逢沢りく ほしよりこ著
主人公の逢沢りくのパパはアパレル会社の社長、
ママは元キャリアウーマンの完璧な専業主婦。
その一人娘のりくは、中学2年生。
ほかの同級生たちから「特別」とおもわれており、
そしてりく自身も自分を「特別」と思っていた。
りくは、悲しくもないのに、涙をこぼすことができる。
これ、関西の大おばさんが送ってくださったのよ。
自分で作ったおかずとか・・・
せっかくだけど、ほら、何入っているかわからないじゃない?
うちは野菜でもお米でも安心できる業者から取り寄せているものしか使ってないし、育ち盛りのあなたにそういう得体のしれない物、食べさせたくないのよ。
お水もこだわっているの知っているでしょ。
農薬まみれのものとか口に入れてほしくないの大事な娘には。
ママは、そんなこと言っていたくせに、自分が子育てを終えて、
仕事に復帰するにあたって資格の勉強がしたいからと言って、
その関西の大おばさんの家に、りくを数か月預けることにする。
りくはいやいやながら、母親の方針に従って、関西に行く。
い~っやっ!!
ちょっと!
めっちゃくちゃベッピンやないの~っ!
タレントさんみたいやわっ!
東京の子みんなそうなん?
それともあなただけ特別~?
テレビにでたら~?
出れるえ~
おばちゃんと一緒に出えへん?
”ちちんぷいぷい”
りくはこの関西の全く違う環境に拒否反応をしめしながらも、
母親に対する当てつけで、東京には帰りたいと言わずに我慢する。
さて、この作品は、非常に上手に「ステレオタイプ」を使っている。
りくの東京での生活は、まさしく地方出身者がイメージする
おしゃれな都会のライフスタイルだ。
裕福な家庭、小学校受験を経てエスカレータ式の学校に入学、
朝食は、スムージー、ヨーグルト、ジンジャーハニーとパン。
バイキンがうつるといけないから、野良猫にも触らない。
そして、りくのいった関西の大おばさん宅は、
まさにコテコテの関西の家庭。
食事中もテレビをつけて、テレビドラマにでてくる関西弁に突っ込むし、
弁当がなぜか「お好み焼き」。
実際にこの漫画をよんだら、あまりにステレオタイプすぎると
苦笑してしまうぐらい、典型的なのだ。
また、この作品には、小鳥が出てくる。
パパの愛人の女性から、飼いたくもないのに小鳥を飼わされることになり、
仕方なしにりくはこの小鳥を関西の大おばさんのお宅に連れていく。
東京では、仕方なしに飼われていた小鳥が、
関西では、みんなに愛されて、言葉を少しずつ覚えていく。
そして、一番の衝撃を受けたエピソードは、下巻のりくのママの行動だ。
りくのママは、娘が関西の学校で、着ている制服が違うとクラスメイトから
いわれてトラブルになっているのを知り、関西の学校の制服を送る。
しかし、りくはこれをママに送り返す。
そして、ママがそれに対してとった行動は、衝撃的だったが、
「ああそうか、そうなんだな。」
と、納得するものだった。
この作品は大場登先生風に分析すると、
「ほしよりこ」風の「白雪姫」のものがたりなのだ、
ママに追い出された娘は、森の中で7人のこびとたちと過ごすのだ。
そして、いったん死んで復活するのだ。
この作品は、「東京=とりつくろうモノ」、
「関西=真実をみぬくモノ」として描かれている。
非常に現代的な寓話として、傑作だと思う。