放送大学で勉強中

放送大学で頑張って勉強する日記です。

【読書感想】 カウンセラーは何を見ているか 信田さよ子著

なかなか印象的な表紙なので気になって購入した一冊。

著者は心理相談室を独立で開業しているベテラン臨床心理士だ。

 

この表紙を見て

「きっとセクシーカリスマカウンセラーのスーパーテクニックが、

書いてあるに違いない。」

と予想した方には、まったく残念な一冊だと思う。

 

著者は、70歳手前のカウンセラーだし、

スーパーテクニックが書いているわけでもない。

 

しかし、私は読んで面白い本だと思った。

この本は、実用的な本ではない。

ベテラン心理士が、今まで経験してきた中で得た、

個人的な思い、感情、本音がそのまま書かれた本なのだ。

 

ふつうプロフェッショナルというのは、

それが何の分野であっても、なんとなく独特の

格好をつけたような言動というものが自然と出る。

プライドがそうさせるのかどうかはわからないが、

ちょっとぐらい格好をつけた言動のほうが、

カリスマ性があって、いろいろな意味で都合がよいのかもしれない。

 

そのような格好をつけた言動がこの本からは感じられない。

まさに「そのまんま」なのだ。

 

 この本では、前半は、実際の心理士としての

いままでの経験に基づいた、心理師としての独自の見解が書いてある。

また、カウンセリングセンター運営のためには、

貪欲にお金を稼ぐことを考えなくてはならない現実についても、

はっきり書いてあり、このあたりの嘘のなさは非常に好感が持てる。

 

後半は、おそらく個人的体験を下敷きにした、

私小説的な文章で、心理士としてではなく、

検査のために病院に滞在した間に自分が見たり感じたりしたことをベースに

自分自身の心理状態を分析した内容が書かれている。

 

カウンセラーは自分自身の分析を絶えず行いつづける

必要があるということは放送大学の授業でも

はっきりと明記されているのだが、

まさにそれをやっているのだ。

 

自分の弱点、本音を常に見つめて、

自分自身の弱点から逃げないというのは、

相当訓練が必要なのだろうとつくづく感じる。

 

この本の印象としては、本気で臨床心理学を学びたい人には

おすすめできる一冊だと思うが、

心理学などほとんど何も知らない人が、

なんとなく印象の強い表紙に誘われて、読んでみた場合は、

結局何について書いているのか理解できないうえに、

後半は私小説的な内容で、がっかりするのではないだろうか。

 

「了解可能」などの単語が、事前説明なしに、

当然のように出てくるので、著者の想定している読者は

ある程度「わかっている人」なのだろう。

 

カウンセラーは何を見ているか (シリーズケアをひらく)

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