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【読書感想】カウンセリングの実際問題 河合隼雄著

河合隼雄の本は何冊か読んだことがあったのだが、

この本は本当に素晴らしいと思う。

 

放送大学でもほかのカウンセリングの本でも、

カウンセリングの基本的な形式、ルール、原則などが

書いてあるのだが、この本で書かれているのは、

実際のカウンセリングでは、さまざまな要因によって、

その基本が破られる時があるということを書いてある。

 

カウンセリングの基本が破られる時に、どうすればいいのか?

カウンセリングを実施しているときに直面する課題について、

自分の経験も交えて解説している。

 

もちろん、カウンセリングの基本をきちんと理解していないと、

現在のカウンセリングの状況はどの程度基本から離れているのか

把握できないため、やはり基本が大切だが、

状況に応じて基本から離れても仕方ない局面があるということを

はっきりと言っている。

 

結局カウンセリングとは、クライアントとセラピストの化学反応であり、

その化学反応の結果として何が生じるかはわからないリスクがある。

しかし、何かを生み出そうとしたときには、原則から一歩踏み出す必要が

ある場合があり、同時にそれは非常に危険をともなう行為となる。

 

セラピスト側に「この状況では基本を離れても仕方がないが、

しかし、非常に危険な行為をしているのだ」という自覚が、

最も大事だということのようだ。

 

「転移」や「逆転移」の取り扱いについても

詳しく書いてありわかりやすい。

河合隼雄自身がカウンセリング時に「逆転移」の状態になった

例なども具体的に書かれている。

 

 基本的にカウンセラーはクライアントの言うことを受容するのだが、

それは100%受容するという意味ではないし、状況に応じては、

相手の意見を受容しつつ、カウンセラー自身の本音を言う場面も

あってもよいのだと書いてある。

教科書的ではない、実践に即した人間臭い話が、

包み隠さず書かれている魅力的な本だと思う。

 

カウンセリングの実際問題

カウンセリングの実際問題