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【読書感想】アル中病棟―失踪日記2 吾妻ひでお著

 漫画家の吾妻ひでお氏がアルコール依存症のため

精神病院で入院治療を受けた時の体験記漫画。

 

この本の魅力は、何度も入退院を繰り返すアルコール依存症患者の

懲りない面々のエピソードを楽しむ点にあると思うが、

そのエピソードについては、この本をご購入の上楽しんでいただくことにして、

ここでは吾妻先生が実体験したアルコール依存症治療の実態について、

まとめておく

 

ある日家族に病院に強制的に連れていかれて、

病院で暴れるも、何かの注射を打たれて眠らせられて入院することに。

入院時に暴れたため、手足を拘束されて、

看護婦さんに「幻覚」についての恐怖を訴えるが、

「点滴にお薬入っているから大丈夫よー」といわれ、

そのとおり現代医学によって幻覚はでなかったが、多少の離脱症状が発生。

1週間ぐらいでようやくおかゆが食べられるようになる。

 

吾妻氏が入院したA病院は、約3か月の入院プログラムが存在し、

以下の通りとなる

 

1期

離脱症状および身体的治療の期間で閉鎖扱い。(大体1~2週間)

閉鎖扱いとは外出禁止のことで、ホールをうろうろすることは可能

個室に閉じ込められるわけではない。

 

2期

プログラムに沿って治療を受ける契約をする。(6週間)

自由意志・任意で入院を続け治療する。強制ではないため退院も可能。

吾妻氏は、強く勧められたのでなんとなく契約することに

決められた区域での散歩が可能

朝食前にシアナマイド(お酒を飲むと気分が悪くなる薬)服用が義務付けられる

自助グループへの参加も推奨される

 

3期

退院に向けての準備期間(4週間)

外出・外泊訓練が始まる。自助グループも夜の例会にでなくてはらない。

 

なお、入院中に飲むと24時間反省室(通称ガッチャン部屋)に入り

1週間の「閉鎖」になる。なお吾妻氏はこの反省室には入ったことはないとのこと

 

 このように吾妻氏によると3か月程度のプログラムとされているのだが、

同時にこの本の中には入院歴10年という人などもいて、

「3か月プログラム」が適用されてない人もいるんだなあ。

としみじみ感じる。おそらく生活保護受給者の

社会的入院というものかもしれない。(私の想像)

 

ここで面白いと思うのは、アルコール依存症の治療とは、

1期で主に行われる身体的治療、2期以降に行われるシアナマイドの服用、

断酒教育ぐらいしかないようだ。

 

3期は主に、試しであり、外泊や夜の外出を義務付けることによって

外出中にアルコールに手を出さないか確認する時期になるのだ。

 

つまりアルコール依存症の治療とは、自分が二度とアルコールを飲むべきではない

自覚をなんとか芽生えさせることで、アルコールからの依存を解決するということだ。

これはかなり厳しく、ある程度病院はアルコール依存からの脱却を

手伝ってはくれるが、結局は、アルコールを飲まないように

自分自身を変えるしかないということだ。

 

 そのため2期に進むかどうかは「治療契約」によって決まり、

実際には契約せずに退院する人も多いようだ。

つまり、本人に全く治療の意思がない場合は、その先に破滅が待っていることが

予想されていても、結局、何もできないということを、

病院側がよく知っているということだろう。

 

カウンセリングも契約によって始まるが、

心の問題の解決には本人の意思が不可欠なのだろうとしみじみ思う。

 

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟